テキストサイズ

BL~中編・長編集2~

第17章 ~一番好きな人~

「朝陽‼‼」

「っ‼!?」

名前を呼ばれて顔を上げれば、そこには今一番会いたい人がいて。
僕は、自分の目が信じられなかった。

なんで…どうして…? どうして先輩がここにいるの…?
これは夢…? 僕は幻覚でも見てるの……?

「朝陽…」

先輩はソファに座って泣いている僕に駆け寄って来ると、僕をぎゅって抱きしめてきた。

どういうこと……? 先輩に抱きしめられて、全身がとても温かい…先輩の匂いに包まれて安心する…
これは…夢じゃないの……?

「ごめん……ごめんな…」

「せ……ん…ぱ、い……ど…して…?」

なんで、先輩がここにいるの…? 今日は、彼女さんの誕生日なんでしょ?
どうして、僕のこと抱きしめてるの…?

そんな震える手で…まるで、大切なものを抱きしめるみたいに。

「気づいてやれなくてごめん…」

なにが……? どうして先輩は謝ってるの…?

僕の頭は混乱していて……思考が全然追いついていかない。

今、何がどうなってるの…?

「さっき、笹木に会った。 お前に何があったのか聞いた。」

「ぇ……」

先輩の言葉を聞いた瞬間、頭が真っ白になった。
何を言えばいいのかわからない。

「どうして俺に言わなかった? 俺、一応お前の彼氏なんだけど?」

「…ぁっ…」

声から、先輩が怒っていることがわかる。
また体がガクガク震えてきて、先輩の登場で驚いて止まっていた涙が、また溢れ出してきた。

なんて答えればいい? なんて言えば、先輩に嫌われずに済む?

「ごめっ……な、さ…ッ…」

「謝らなくていいから。 なんで俺じゃなくて、笹木を頼ったんだよ?」

なんでそんなこと言うの…? その言い方じゃ、まるで……将仁に嫉妬してるみたいじゃんか…
先輩は、僕のことなんてなんとも思ってないくせに。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ