♡*:。.rena's world story.。:*♡
第10章 ☆それだけで、幸せ
「あんた本当に23歳なの?
やっぱりピュアとバカは紙一重なんだわ~」
ぶつぶつ言いながら、オーナーは発注シートに目を通している。
……僕の気持ちなんて、ちっとも分かってくれていない。
「……夫婦っていいなぁ」
パイ生地が並んだ作業台に顎をつけて、ぼそっと呟くと
オーナーはため息をついた。
「周りからすれば、羨ましく見えるだろうけど。
誰もが皆、ただ単にラブラブってわけじゃない。
結婚した本人達にしか分からない、色んな柵があるのよ」
「でも、大好きな人が自分のパートナーだって、堂々と言えるんだよ。
それってめちゃくちゃ幸せなことだと思う」
「……!」
オーナーが目線を上げて僕を見る。
今まで何度も恋に落ちて
相手も好きになってくれるけど
なぜか僕は、その幸せが続かない。
犬みたいとか、自分より可愛いから嫌だとか
そんな理由でいつもフラれてしまうんだ。
いつか、あのご主人にとっての彩さんのような
素敵な相手に巡り合う日が、僕にも来るのかな……