テキストサイズ

一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第12章 第一部第三話【月戀桜~つきこいざくら~】 十六夜の月

 腰高のそっと開く音、ひそやかな足音が響く。よくよく神経を研ぎ澄ましていなければ聞き取れないほどだ。しかし、小紅は聞き逃さなかった。このときを待っていたのだ。
 彼女もまた静かに障子を開けて、外に出た。身を切るような冷気が一瞬で身体を冷えさせる。しかし、そんなことにかかずらっているわけにはいかない。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ