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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第13章 第一部第三話【戀月桜~こいつきざくら~】 龍馬という男

 耳をつんざくような怒声が響き渡り、小紅の側を物凄い速度で荷馬車が駆け抜けていって初めて我に返る。茫然と立ちすくむ小紅の肩にそっと分厚い手のひらが置かれた。
「危ないところだったな」
 ハッと振り返ると、見憶えのある人懐っこい笑顔がそこにあった。
「坂本さま」
 小紅は眼を見開き、ひと月前に宇之助という男から小紅を助けてくれた若い武士―坂本龍馬を見つめた。

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