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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第14章 第一部第三話【戀月桜~こいつきざくら~】 熾火(おきび)

 どれほど辛かっただろう。芝居の世界に飛び込んで八年、今日こそは明日こそは立て役になれることを望み、一心に稽古に打ち込んできた。しかし、立て役にはついに一度もなれず、挙げ句、師匠である座頭の安田梅光には
―真の役者は舞台に立っただけで、虚構を本物に変えられなきゃならねぇ。
 と言われた。

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