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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第15章 第一部・第三話【戀月桜~こいつきざくら~】 すれ違い

 約束の時間きっかりに行くと、既に茶屋の店先には見慣れた姿があった。繋ぎを取るときには、あくまでも見知らぬ他人のふりでと念を押されている。 
 龍馬は小紅を認めているはずなのに、振り向きもしない。小紅は構わず龍馬の隣に座った。店先に緋毛氈を敷いた長椅子が二つ並んでいる。それぞれの椅子は少し間隔をあけて置かれていて、その間を通って店の奥に入れるようになっている。

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