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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第16章 【戀月桜~こいつきざくら~】決着~安政六年四月五日宗徳寺

 やはり、栄佐一人では心許ないと何事かあったときのために、いつも控えさせていたのかもしれない。
 龍馬が舌打ちした。
「何ちゃ、こんな余計なもんがいたとはのぅ」
 しかし、言葉ほどに困惑している風はない。
「栄佐さん、ちっくと力を貸してくれんか」
 まるで十年も昔からの親友のように気安く栄佐に呼びかけるも、栄佐は刀を抜いたまま冷たい眼で龍馬を見ているだけだ。

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