『一度だけ抱いて～花は蝶に誘われてひらく～』第16章「【戀月桜～こいつきざくら～】決着～安政六年四月五日宗徳寺」　1248ページ

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一度だけ抱いて～花は蝶に誘われてひらく～

第16章【戀月桜～こいつきざくら～】決着～安政六年四月五日宗徳寺

　風もないのに、時折、気まぐれに落ちてくる花びら。その桜貝のような薄紅色の小さな花びらを手のひらで受け止め、小紅はじいっと見入った。
　と、傍らに立った栄佐が小紅の手許を覗き込んだ。
「ちっちゃなもんだな」
　どれと、栄佐が手を伸ばし、小紅の髪に触れた。あまりに突然のことだったので、警戒する暇もなかった。