テキストサイズ

一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第16章 【戀月桜~こいつきざくら~】決着~安政六年四月五日宗徳寺

 彼の手が触れてドキドキしたのは、何も怯えているからではなかった。龍馬の言うようにここ(心臓)が自分でも煩いくらい高鳴っているのは、確かに栄佐のせいだけれども、その理由がいつもとはまったく違うことは小紅にも判っている。
 こんなに近くだから、ドキドキしてしまうだけだ。他に意味はない。必死に自分に言い聞かせたけれど、忍耐もそう長くは続かなかった。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ