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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第16章 【戀月桜~こいつきざくら~】決着~安政六年四月五日宗徳寺

「え、栄佐さんっ」
 小紅が更に紅くなって抗議するのと、咳払いが聞こえてくるのはほぼ時を同じくしていた。
「あー、独り者の前で見せつけてくれるのぅ、二人とも俺がおるのも忘れとるんじゃないか」
 龍馬が片手で熱くもないのにしきりに顔を扇いでいた。研ぎ澄まされたような冷めた光を放っていた満月の色が淡く優しく変じているように見えるのは気のせいであったろうか。

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