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一度だけ抱いて～花は蝶に誘われてひらく～

第16章 【戀月桜～こいつきざくら～】決着～安政六年四月五日宗徳寺

「小紅どの、幸せになるんぜよ」
　未練を振り切るかのように桜から眼を離し、彼が小紅を見つめた。
「はい、坂本さまもお達者で。土佐までの道中のご無事をお祈り致します」
　小紅が微笑んで頭を下げるのに、龍馬はあの屈託ない笑みを浮かべた。
「おまんが祈ってくれるなら、無事は間違いないけぇの」
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