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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第19章 第二部・第四話【悲願花~女になった男~】 異変

 父も淋しかったのだろう。先代から命じられた結婚ではあっても、父は美しくて控えめな母に夢中だったから。その心の隙間にお佐津がつけいったのだ。
 父にも非があることは理解している。世慣れた、女をよく知る男であれば、お佐津の甘い科白がほんの上辺だけのものであることは見抜けたはずだ。それができなかったのは、父が甘く、あまりにも女という生きものを知らなさすぎたからだ。

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