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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第20章 第二部・第四話【悲願花~女になった男~】 定命  

 待っていたように現れた栄佐に、先刻の騒動は話せなかった。話せばまた、一人で出歩くのはだから物騒だとか、お前は不用心すぎるとか、いつものお説教が始まるからだ。
 それに、彼に余計な心配をかけたくはなかった。もう済んだことならば、敢えて報告する必要もないだろうと判断したのである。
「京屋で大内儀さんに引き止められて、少しお話したものだから」
 今日はお彩は留守だったのだが、そういうことにしておいた。

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