
一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第20章 第二部・第四話【悲願花~女になった男~】 定命
と、小紅はふと思いついた。栄佐の顔が広いことに思い至ったのだ。
「ね、栄佐さんは錺職の輿平太さんって知らない? 神田明神の近くの長屋にお母さんと妹さんとで住んでるらしいって話だけど」
「輿平太?」
栄佐の切れ長の瞳が剣呑な光を帯びた。
「何だ、そいつは。一体、どこのどいつだ?」
しまったと、思ったときには時既に遅かった。つくづくお喋りな自分が恨めしい。
「おい、小紅。俺の顔をちゃんと見て話せ」
「ね、栄佐さんは錺職の輿平太さんって知らない? 神田明神の近くの長屋にお母さんと妹さんとで住んでるらしいって話だけど」
「輿平太?」
栄佐の切れ長の瞳が剣呑な光を帯びた。
「何だ、そいつは。一体、どこのどいつだ?」
しまったと、思ったときには時既に遅かった。つくづくお喋りな自分が恨めしい。
「おい、小紅。俺の顔をちゃんと見て話せ」
