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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第2章 【残り菊~小紅と碧天~】 恋一夜

「こちらの若旦那さまが旦那さまの実のお子ではないという噂があるそうね?」
 お琴は思いもよらない人から思いもよらない話を聞いたというように小さな眼を丸くした。
「ええ、それは確かにそういう話がないわけではありませんが」
 いつも歯切れの良い物言いをする彼女にしては極めて珍しい曖昧な言い方は逆に、かえって何かあると感じさせるには十分だ。
「本当の話なのかしら」

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