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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第20章 第二部・第四話【悲願花~女になった男~】 定命  

 おきみさんが大変なときに、私ってば何を考えているの。これでは栄佐さんの様子が変だなんて言えやしない。
「早く! 恐らく今夜が山だ。何とかして、おきみさんを助けたい。お前も力を貸してくれ」
 これまでに聞いたことがないほど真摯な声に、小紅は思わず頷いていた。
「はいっ」
 袂から紅絹(もみ)の紐を取り出し、素早くたすき掛けすると、慌てて湯を沸かす準備にかかった。

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