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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第20章 第二部・第四話【悲願花~女になった男~】 定命  

 おきみが眠るように静かに息を引き取ったのは、それから半刻も経たない刻限であった。
「無念だな。痲疹だけでも、老いた身体から生きる力を奪ったのに、嘔吐と下痢がそれに輪を掛けた」
 栄佐は口惜しそうにひと言、ひと言を噛みしめるように言った。両脇に垂らした握り拳が小刻みに震えている。

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