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　栄佐さんは、やはり武士だったのね。
　小紅の薄々予感していたことは、時ここに至り、俄に現実味を帯びてきた。貧乏ではあっても、輿平太の言うように武士は武士、小紅のような町人とは本来は生きる世界が違う人だ。
　そんな人が名を変え町人に身をやつし市井に紛れて暮らしている。しかも鍼医や歌舞伎役者と来ている。栄佐の芝居にかける情熱は本物だと何より小紅がよく理解している。