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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第21章 第二部・第四話【悲願花~女になった男~】 兄の悩み

 けれど、栄佐はいつものようにその挑戦的な科白に乗ってくることはなかった。
「こんな俺で本当に良いのか?」
 らしくない、気弱な科白。
「私は自分が望んで栄佐さんの側にいるの。栄佐さんの心配だって、私がそうしたいからしてるんだから、気にしないで」
 またしてもかわいげのない科白を口にしてしまい、流石にこれはまずかったかと、慌てて微笑んで栄佐を見上げれば。
 何と栄佐は惚(ほう)けたように小紅を見つめていた。

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