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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第21章 第二部・第四話【悲願花~女になった男~】 兄の悩み

「大丈夫よ」
 本当に? どこの誰とも知れない男に本当にあなたは一生涯、付いてゆけるの?
 心のどこかでもう一人の自分がしきりに囁いていたのに、小紅は耳を塞ぎ、その声に気づかないふりをした。
 それは栄佐への愛ももちろんあったけれど、本当は小紅自身が怖かったから。仮に栄佐の身分が輿平太の言うように貧乏旗本の子息というだけではなかったら―真実を知るのが怖かったからだ。

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