テキストサイズ

一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第1章 【残り菊~小紅と碧天~】 始まりは雨

 父の実家は小さな青物屋を営んでいたが、今はもう商いはしていない。二人きりの兄弟で、弟の武平も幼い頃から奉公に上がった。難波屋もまた呉服太物問屋である。かつての上州屋には及ばないものの、中規模どころの固い商いをする店として特に最近ではめきめきと頭角を現していた。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ