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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第21章 第二部・第四話【悲願花~女になった男~】 兄の悩み

 その様を憂えたのが、随明寺の住職徳源和尚だった。徳源和尚は思案の末、大般若経を自ら背負い、江戸市中の家々を一軒一軒回り、経を読んで、その功徳が遍く人々に行き渡ることを願った。
 もちろん長いお経をすべて読むことはできず、触りを短時間唱えてはまた次の家へと回り、そうやって幾日もかけて多くの家々を訪ね歩いたのである。

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