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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第22章 第二部・第五話 【冬柿】 予兆

 栄佐は見るからにうらぶれたなりをしていた男の姿を思い出した。着ているものは長旅の末らしく汚れていたし、あちこち綻びてもいた。月代も髭もだらしなく伸びていて、折角の男ぶりが台無しだ。あんな父親の姿を見て小紅がどう思うかと考えただけで、胸が痛む。
―良いかえ、本当に医者なのかどうかは知らないが、ここの娘に遊び半分で手を出しちゃ、この私が許しちゃおかないよ。

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