テキストサイズ

一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第22章 第二部・第五話 【冬柿】 予兆

 栄佐が納得したように頷いた。
「あのことか。そりゃ、憶えてるぜ。お前が俺の男ぶりに負けて惚れた記念すべき夜だもんな」
 小紅は呆れた。
「まっ、言うに事欠いて、よく言うわ」
 このいささか自信過剰なところがいかにも栄佐らしい。しかも、男のこういう部分も悪くないと思ってしまうのだから、やはり彼の言うように自分はあの瞬間、この男に心奪われてしまったのかもしれない。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ