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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第23章 第二部・第五話 【冬柿】 冬柿

 昼下がり、彼は一旦、長屋に戻ってきた。症状が重くて通ってこられない重症患者の家を数軒まとめて訪ねた帰りのことだった。昼からは長屋に腰を据えて、今度はやってくる患者の診療をしようと思案している。
 こういうときはいつも小紅が昼飯を用意してくれている。今日は出がけに顔を見せて、栄佐の好きな蕎麦にすると話していたことを思い出し、栄佐の顔はひとりでに笑み崩れる。

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