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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第23章 第二部・第五話 【冬柿】 冬柿

「何だいじゃないよ。さっきから、あたしゃア、もう数え切れないくらいに栄さんを呼んだのに、まるで気づきゃしないんだから。なになに、何かそこまで有頂天になることがあったっていうの?」
「いや、その―」
 今まで小紅と恋仲だと長屋の住人に話したことはない。二人の様子からも皆、気の置けない隣人か、良くて兄妹のような関係だと信じ込んでいるらしかった。

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