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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第23章 第二部・第五話 【冬柿】 冬柿

 結局、父は自らの弱さに負けた。だからこそ、その弱い部分にお佐津に付け入れられ、破滅の道をひた走ることになってしまった。亡き母が愛し残したすべてのものを犠牲にして。
 確かに母が生きていた頃は良かったかもしれないが、母の死後、父の生き方も含めてみると、自分の両親はどう見ても理想の夫婦とは思えなかった。ならば、夫婦の本来あるべき姿とは何なのだろう? 十七歳の小紅にはなかなか難しい問題だ。 

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