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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第23章 第二部・第五話 【冬柿】 冬柿

 父は四十一歳になっているはずだが、実年齢よりは十は更けて見える。すっかり小さくなってしまったのは、世間さまに顔向けできない生き方をして身を縮めて生きてきたからか。それとも、三年の根無し草の日々が父から生きる気力も何もかも奪ったのか。
 小紅は溢れそうになった涙を眼裏で乾かし、父をひたすら見つめた。
「何で帰ってきたの?」
 小紅は叫んだ。

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