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　もっとも、最初から判りきっていたことではあった。お佐津のようなすれっからしが父のようなつまらない男で我慢できるはずがない。父は女の気を惹く甘い科白一つ言えない生真面目な男なのだ。
　お佐津は端から父の金と上州屋の身代が目当てだった。だから、上州屋がもうのっぴきならないと判った時点で、父に駆け落ちを持ちかけ、店の有り金はおろか父祖伝来の骨董品まで持ち出させたのだ。