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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第23章 第二部・第五話 【冬柿】 冬柿

「おとっつぁんのこんな情けない姿なんて、見たくなかった。おっかさんが極楽で泣いてるわよ」
 恋女房のことを持ち出され、仁助も堪えきれなくなったのか、クッと肩を揺らし唇を噛みしめた。男泣きに泣いているのだと判った。
 いけないと思いながらも、小紅は抑えられなかった。この三年間というもの、心に澱のように降り積もったすべてをこの情けない父親にぶつけたい、吐き出したい。

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