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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第23章 第二部・第五話 【冬柿】 冬柿

 だから、今更、止められない。すべてを奪われ、台無しにされ、味あわされた三年間のこの苦痛! やるせなさは誰にも判らない。
「獣だって我が子はちゃんと育てるのに、おとっつぁんは実の娘を見殺しにした。人でなしよ」
 とどめの言葉を投げつけたその瞬間だった。鋭い一喝がなおも溢れ出ようとする言葉を止めた。
「止めな」

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