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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第24章 第二部第五話 【冬柿】 父と娘

 和泉橋まで走ってきたときには、脚自慢の栄佐も流石に息が上がっていた。荒い息を吐きながら、それでも手遅れになってはならじと眼を凝らすと、少し前方に小さな橋が見え、その中ほどに仁助が立っているのが見えた。
「やばい」
 栄佐は慌ててまた走り出した。それに気づいた仁助が橋の上から身を乗り出そうとする。それを寸前で羽交い締めにして、栄佐は叫んだ。

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