テキストサイズ

一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第24章 第二部第五話 【冬柿】 父と娘

親父さんは死んで浮き世のことは全部忘れて楽になれるかもしれねえが、残された小紅はまた全部背負(しょ)い込んで、あの小さな心を痛めながら生きていかなきゃならないんだ。そんなのって、ありますか? 親父さんも親なら、ちったぁ手前のことばかり考えねえで、たった一人の娘のことも考えてやっておくんなさい」
「―」
 栄佐の言葉の一つ一つが仁助の心に滲み渡っていくようであった。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ