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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第24章 第二部第五話 【冬柿】 父と娘

 小紅はいつしか泣いていた。幼い日、父と母に両側から手を引かれて随明寺の縁日市に連れていって貰ったことなどが次々と脳裡を駆け巡っていった。今も、思い出すのは父に裏切られ棄てられたことではなく、父に肩車して貰ったことや愉しい想い出ばかりだった。
 両膝を抱え座り、顔を伏せて泣いていると、唐突に頭上から声が降ってくる。

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