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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第24章 第二部第五話 【冬柿】 父と娘

 栄佐は白狐の面を、小紅は風車をそれぞれ買った。先刻から栄佐は狐面を被ってはふざけて小紅を笑わせている。漸く冗談が終わっても、彼はまだお面を頭に乗せたままだ。男前の栄佐にはそんな格好ですら様になっている。美男は特だとつくづく小紅は思う。
 随明寺門前からの長い道を歩いてくると、和泉橋に差し掛かる。その少し手前で、栄佐がふと立ち止まった。小紅も彼にならって歩みを止める。

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