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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第24章 第二部第五話 【冬柿】 父と娘

 小紅がつくづく罪作りな男の横顔に見とれていたその同じ時、当の栄佐もまた
―ちょいとからかってやっただけで、真っ赤になってやがる。これで一度は男に抱かれた女だっていうんだから、女ってえのは判らなねえ。ま、そういう初(うぶ)なところが小紅はいっとう可愛いんだがな。
 と、似たようなことを考えていたのだが、ご両人はそのようなことを知るはずもない。
 二人はまだ隠居と話し込んでいる仁助の煮売り屋の側を通り抜け、橋を渡った。橋の中ほどで栄佐がまた脚を止めた。

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