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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第25章 第二部・第六話【春咲く花】 再会

「何でもねえ。どうやら、気のせいだったみたいだ」
 笑い飛ばすかのように言うのに、漸く傍らの小紅の面にもうっすらと笑みが浮かぶ。まるで大輪の花なら今にも開こうかというばかりの眩しい笑みに、栄佐はつい見惚れてしまいそうになる。小紅と知り合って三年めに入ったところだが、この三年でまだどこか子ども子どもしたところのある少女はそこはかとなき色香を漂わせる大人の女になった。

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