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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第25章 第二部・第六話【春咲く花】 再会

「殿!」
「その呼び方は止せ。俺はもう角倉の家とはとうに縁の切れた身だ」
 栄佐は傍らの小紅をチラリと見た。可哀想に小紅は蒼褪めていた。たったこれだけのやりとりで子細は判らないだろうが、小紅は聡明な娘だ、大方は察しただろう。栄佐がかなりの身分の―〝殿〟と呼ばれる身分であることを。

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