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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第25章 第二部・第六話【春咲く花】 再会

「―っ」
 〝お手つき〟というひと言に、小紅がヒュッと息を呑んだ。気遣わしげに見ると、彼の想い人の眼には今にも零れ落ちんばかりの大粒の涙が滲んでいた。
「源五、物の言い方をわきまえよ。この娘は気まぐれや遊びで側に置いているのではない。既に婚約も交わし、春には祝言を挙げると決めた妻だ」

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