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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第25章 第二部・第六話【春咲く花】 再会

 めぐる想いに応えはない。石段をふもとまで降りてきたその時、ぬっと黒い影が眼前に立ち塞がり、小紅は弾かれたように面を上げた。気がついたのが遅すぎた。目つきの良くない見るからに凶悪な人相の若い男が二人、小紅をそれぞれ前と後ろから通せんぼするように立っていた。
「あなたたちは誰?」
 小紅は努めて恐怖を出さないように瞳にも声にも力をこめて威圧するように叫んだ。

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