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　栄佐はまだ剣呑な眼つきで伸びている男を見下ろし、小紅に念を押す。小紅が頷くと、彼はやっと安堵したような表情になり、いきなり抱きしめてきた。
「茶店のおうめさんが知らせてくれたんだよ」
　栄佐の話によれば、小紅が息継ぎ坂を下りてくるほんの少し前、栄佐は茶店に桜団子を買いにきた。その茶店は丁度、石段を降りきってすぐ右隣にある。桜餅は花見の時季しか売らない季節限定だが、桜団子は一年中売っている。江戸の名物としても名高く、遠方からわざわざ買いに来る客がいるほどだ。