テキストサイズ

一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第26章 第二部・第六話【春咲く花】 略奪

―良いか、俺が行くまでちゃんと待ってるんだぞ。少しくらい遅くなっても、絶対に一人で帰るんじゃねえぞ。お前はせっかちだから、俺は心配なんだ。
―まっ、失礼ね。西も東も判らない子どもじゃあるまいし、一人で帰れるんだから、そんな心配してくれなくても結構です。
 今朝もこんな他愛ないやりとりをしたばかりだ。栄佐が何故、一人で帰るなとくどいほど言い聞かせているのかを知っていながら、自分は憎まれ口をたたき、素直ではなかった。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ