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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第26章 第二部・第六話【春咲く花】 略奪

 昼間でもな淫猥な雰囲気が漂うような一角である。何故、由緒ある寺の門前道にこのようなものが並んでいるのかといえば、恐らくは人通りのないことが大きな要因であろうと思われた。
 まったく寺の近くでこんな因果な商売をするとは罰当たりなことだと、栄佐はいつもここを通る度に嘆息するのだった。数軒並んで建つ出合茶屋はどれも似たような造りだが、栄佐が丁度その前を通り掛かった時、二つ目の店から二人の影が絡み合あうようにして出てきた。

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