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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第26章 第二部・第六話【春咲く花】 略奪

 そこで自らの考え過ぎを恥じるかのように笑い、首を振る。今頃は小紅もちゃんと長屋に帰って待っているかもしれない。小紅の笑顔が出迎えてくれることを祈りつつ、栄佐はもう一度角倉の屋敷の方角を見つめてから、想いを振り切るように足早に橋を渡って町人町の方に脚を向けた。

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