テキストサイズ

一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第26章 第二部・第六話【春咲く花】 略奪

「大勢で動いては、かえってこちらの動きを母上に気づかれる恐れがある。なに、小紅を一人遊女屋から救い出すくらいなら、俺でも何とかやれる。爺の申し出はありがたいが、ここは爺は知らん顔をしておいてくれ。俺は今日中には江戸を発つ。何か変わった動きがあれば、夕刻までは長屋にいるから知らせてくれ」
「委細、承知仕りました」
 源五は丁重に頭を下げ、栄佐は頷くと何事もなかったような表情で和泉橋を目指して歩いていった。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ