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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第3章 【残り菊~小紅と碧天~】 旅立ち

 小紅は自分の気持ちを無理に封じ込めていた。 
 居室に戻り、小さな溜息をつく。
 何を今更、愕くことがあるというの? あの極道息子が大体、家にいた試しがあるのか? 小紅が難波屋で厄介になってから、そろそろひと月になろうとしているが、少なくとも昼間に準平を見かけたのは許婚者として五年ぶりに対面した時、後は物置に連れ込まれ陵辱されそうになったときだけだ。
 大概、あの男は吉原に入り浸っているのだとお琴が教えてくれた。

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