テキストサイズ

一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第27章 第二部・第六話【春咲く花】 逢瀬

 花魁の衣装の色目や柄そのものは小紅の年齢にふさわしく愛らしいものだが、その愛らしさがかえって華やかに化粧を施された大人びた美貌に滴るような色香を添えている。
 信右衛門は改めて小紅をまじまじと見つめ、感嘆の吐息を洩らした。
「これほどの美女がこのような小さな田舎の旅篭町にいるとは。まさに傾国の美、男を虜にする魔性の美貌だ」
 生暖かい手のひらにつうっと頬を撫でられ、小紅は全身総毛立った。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ