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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第27章 第二部・第六話【春咲く花】 逢瀬

 品は悪くはないが、どうも覇気のない茫洋とした印象の男である。顔立ちともあいまって、どこまでも平凡な掴みどころのない印象だ。男は後生大切そうに小さな箱を抱えていた。
 信右衛門は顎をしゃくった。
「私はここで見ているから、存分に描くと良い」
 小紅は突如として登場した若い男を茫然として見つめていた。が、彼がいきなり近づいて腰布を剥ぎ取ったので、悲鳴を上げた。

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