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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第27章 第二部・第六話【春咲く花】 逢瀬

「あぁ―」
 小紅は一瞬、五感のすべてが世界と断絶したかのような感覚に襲われた。夢中で栄佐の逞しい背中に手を回して縋りつきながら、小紅は自分の身体中を彼という存在が余すところなく満たしてゆくのを感じた。
 今、栄佐自身が小紅なのか、小紅が栄佐なのか。自分でも判別がつかないほど、二人は奥深い箇所で繋がり合い、混ざり合っていた。

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