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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第27章 第二部・第六話【春咲く花】 逢瀬

「お前の気持ちは何より嬉しいしありがてえが、俺はお前だけは譲れねえ。確かにお前の言うとおりだ。夢が役者といえば聞こえは良いが、何年経っても売れねえ万年大部屋役者。そろそろ夢も見きりのつけ時だって、それも判っちゃいる。鍼医にしたって、お前が言うように、無理に俺じゃなくても他に腕の良い医者はごまんといる。だからよ、俺もそろそろここいらが引き際じゃねえかと―元の自分が納まるべき場所に納まるべきだとは重々判ってはいるんだ。

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